マジカティブができるまで


「オダノブなんだっけ」を作って売った体験は、私の人生で大きな転換期でした。

私たちは、ゲームを自分で作り出す、ということにすっかり魅せられたのです。


次の新作は何にしよう。●●なやつ、作りたい。▲▲とか。
ワードゲームの次は、戦略を考えるようなものがいい。
相手を出し抜いたり、逆にはめられたり、そんなゲーム。
せっかくだし、「オダノブなんだっけ?」のスピンオフとして作りたいよね。

こんな話をしながらゲームを作っていき、後は、宣伝方法や売り方を考えながら、次のゲムマ開催日を待つ。


それは本当に楽しい日々でした。


そんな楽しい日々が、2020年2月、やつの出現によって打ち砕かれました。
わざわざこの記事で名を出すのもおぞましい。そう、やつの名は、COVID-19です。

私たちの新作「さぼっちんぐアケチくん」が完成した矢先に、それは訪れたのです。
不要不急な外出の自粛、感染予防対策の徹底、そして緊急事態宣言。
まったく想定もしていなかった外的要因を、フルコンボで決められたのです。



オンラインのみのゲームマーケット2020春

さて、そんな中で迎えた、ゲムマ2020春。

開催は4月終わりごろ。デジタルで、つまりオンラインのみの開催となり、Webショップからご購入いただく形となりました。

なんと主催のアークライト社が商品在庫を預かり、配送等の手配を引き受けて下さるというもの。私たちはご厚意に感謝しつつも、ひとつ頭を悩ませることがありました。

「このご時世に、大々的に宣伝してもいいものか?」

新作である「さぼっちんぐアケチくん」を、バンバン宣伝していいのかマズいのか、判断に迫られたのです。
折しも、感染拡大のニュースが日々飛び交う状況で、とにかく密を避けてという時期です。


通勤もできるだけ減らして。外食も避けましょう。
なるべくモノに触れないように。人との会話も控えて。
人と会う事自体をなるべくやめて。とにかく密を避けて。

『集まって、対面で喋りながら、コンポーネントをみんなで触って遊ぶ?』
『『『トンデモナイ!!!!』』』

私たちは、「あまり大っぴらに、目立つような宣伝は避けましょう。でも宣伝はしましょう」という結論を出しました。

そうです。こんなもの方針でも何でもないです。


結果は……お察し頂けるかと思いますが、惨憺たる有様でした。
今でも作品に対して、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

「どんなに自信を持って作り出したゲームでも、みんなに知ってもらわないと買ってもらえないんだなぁ」

たった2作ではありますが、「オダノブなんだっけ?」「さぼっちんぐアケチくん」を通して、私たちは学びを得ました。

今更ながらでしたが、再認識させられました。宣伝は大事。


そしてひらめいたのです。


1つのひらめき、そして面白さとは

『あ、これをゲームにしよう!』

システムやアートワークを組み合わせて架空のゲームを作り、それを様々な方法で宣伝して、どれだけ売れるかを競う。
目指すは、ゲムマ的なイベントでのトップセール、そして伝説へ!

これで基本コンセプトはできました。

システムも大まかに組みあがり、テストプレイも楽しく進みます。
ランダムに組み合わせて架空のゲームタイトルを設定する中では「正体隠匿イケメンバトル」なるパワーワードも飛び出しました。(※正体隠匿イケメンバトルは後々サークル会議でもよくネタとして登場するお気に入りタイトルになりました)


これはいける。間違いなく誰もが「あるある~」とニコニコ笑いながら遊んでくれる。
あとは、バランスを考えながら、どんどん煮詰めて作り込んでいくだけ。

……だった、ハズなのですが。


何故か気付いた時には、

「どんなにひどいコンセプト・クオリティのゲームだろうが、あらゆる手を尽くして宣伝して、とにかく沢山売れれば勝ち」

という、世のゲーム製作者たちに土下座するしかないゲームへと変化していたのです。


しかも、作り込めば作り込むほど、どんどん面白くなくなっていく。
何だコレ。開発当初のあの高揚感はどこへ行ったんだ。


テーマは面白いハズなのに、なぜかゲームが面白くならない。


完全にゲーム開発が行き詰まり、世の中もナントカ対策やらマンボウやらで閉塞感に満ち、何となく積極的に動けないまま……
気が付くと半年以上が過ぎていました。


そしてちょうどこの頃、職場でポケモンカードが流行り出していたのです。

『引いたときに何が出るかわからない』
『うまくコンボが決まると楽しい』
そんなゲーム性から、一つのシステムを思いつきました。


いっそ、最初からゲーム自体のクオリティはほぼ決まっている事にしよう。
みんな同じ条件から始めて、それをどうやって売りこんでいくか。
宣伝方法は3つあり、それらを組み合わせて、どれだけ売れるかを競い合うゲーム。

システムはほぼ完全に出来上がり、テストプレイも済んでいる。バランスも問題なし。プレイ体感も良い。


「ウルカ(仮称)」やっと完成です!

よっしゃ、これでゲムマに出品するぞー!

……と意気軒昂、気合十分の私。そこに雲倉さんから、冷静な意見が。


「これ、システムはホントいいんですけど、コンセプトとはあんまりハマってないですよね」


た し か に !



コンセプト作りへ

しかし、これにピッタリあうコンセプトってなんだろう。
そして、またみんなでわいわい会議です。

この時間が、ゲームづくりで本当に楽しいひとときでした。


「いっそ RummiKub みたいに、絵柄とかなくしてシステムだけにする?」
「なんかカードそろえたらテンション上がるテーマとかにしたいよね」
「かわいい絵にしたい」


「ちょっとインカの黄金やろうよ」

「また大家さんが」(※)

「こう、一獲千金でバーンと」


「派手なのがいいよね」

「魔法だ! 魔法をぶっ放そう!」

「魔法いいね!」

「魔法をつくるから……マジカティブとかどう?」

「「「いいね!!!!!」」」



テーマが決まれば、あとは一気に


世界観構築からキャラ絵に箱絵にマニュアルと、わいわい毎週たのしく会議をかさねて、着々と出来上がっていく。
メンバーそれぞれの頭の中にある「マジカティブ」を、少しずつ、カタチとして確実にアウトプットしていく。


もちろん、この過程でも何度も問題が発生しました。

詳細を詰めるほど、また新たに見つかる問題点。
メンバー同士でズレていた解釈。
この記事を書いている時点でも、まだ未解決の問題があります。


それらを、時には結論が出ないまま何日も悩まされたりもしましたが、全員が納得できる答えを絞り出し、時には誰かの閃きで一気に解決したり。


何事もなくスムーズに、とは全然言えないような歩みでしたが……それでも確実に、出来上がっていく事を実感しながら。
メンバーそれぞれが、完成するであろう姿を想像しワクワク感に満たされながら、マジカティブは確定へ向けて疾走中です。


※補足:マッチダンディズムでは、このカードの絵柄を「大家さん」と呼称しています

大家さんの4コマ漫画はこちら!

マッチダンディズム

ボードゲーム制作サークル「マッチダンディズム」の公式WEBサイトなんだっけ?